3.

遺跡は思っていたよりも小さい規模のものだった。

階層もひとつきりで、部屋の数も知れていた。

調べた限り、それらの部屋の扉にも室内にも罠は仕掛けられていなかったし、財宝と呼べるほどのものもなかった。

価値のありそうなものといえば、最初の部屋にあったような調度品の類や、廃棄されたゴーレム兵といったところで、持ち運びの手間を考えると食指の動かぬものばかりだ。

遺跡は、住居というよりも、離れ座敷のような印象の建物だった。

「ルーエン作の武具か、研究日誌……せめて、他の建物の手がかりでもないと、大損になるわね」

「まったくだぜ。どこもかしこもシケてやがる。残るひとつの部屋に期待するか」

最後にたどりついた部屋は、これまでとは少し違っていた。

部屋の扉は簡素だが頑丈そうな造りで、鍵だけでなく、罠らしきものが仕掛けてあった。

「パースリー、出来るだけ壁にくっついてろよ」

ライクは、懐から盗賊の七つ道具を取り出し、その場に広げる。

罠は二つあった。

正しい鍵を使わなければ、扉にあけられたいくつもの穴から針が飛び出す仕掛けがひとつ。

もうひとつは、扉につけられた取っ手を押すか引くかすると、何らかのスイッチが入る仕掛け。何が作動するのかまでは、ライクには分からなかった。

「ようするにこの取っ手はダミーだ。取っ手がついているのと反対がわを押せば、この扉は開くってわけだ」

「ふうん、単純な罠ねぇ」

「単純だが、この手の罠に引っかかって死ぬヤツが結構いるんだな。……と、鍵穴のほうはどうしようもないな」

ライクにも、手に負えない仕掛けというのがある。そういうときは、あきらめるか、作動させてしまうしかない。

針が飛び出すであろう穴は小さく、全部で十ほどあった。それが扉を横切るようにして等間隔でつけられていた。

穴が小さいのは、たぶん毒針か何かで、小さくても十分な殺傷力があるのだろうと思われる。

「当たるとは思わんが、一応しゃがんでいろよ」

ライクは寝ころびながら、鍵穴へ錠前破り用の道具を突っ込んでいく。

針が飛び出す穴にはすでに、布をちぎって詰めてある。万が一、刺さったとき、その威力を殺ぐことができるようにだ。

いくらかの手応えとともに、ライクは罠を作動させた。

何の音もなく、詰めていた布が飛ぶ。

布は二人を飛び越えて、扉の向かい側にあった壁に当たって落ちた。

ライクは、針の先端に触らないようにしながらそれらを拾い集め、厚めの布にくるんで荷物に片づけていく。

盗賊ギルドにもっていけば、罠の研究にも使えるし、未知の毒でも塗ってあれば、魔術師ギルドが買い取ってくれることもあるからだ。

「パースリー、援護は頼むぜ」

罠は解放され、鍵も外された最後の扉を押し開いていくライク。

パースリーも杖を掲げ持ち、何が飛び出してきても対処できるように構えている。

そして、ゆっくりと開かれる扉の向こうに見えた光景に、二人は思わず笑みを浮かべていた。




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