セキの冒険

翌日。二人の人間と一体のゴーレムが、森へとかかる場所にいた。

この日の明け方前にもやはり、ゴブリンが現れたらしい。また作物が荒らされ、空になった家にも押し入った跡が残っていたという。

再びの襲撃であったが、ゴブリン討伐の予定は変わらない。

カナエは髪を団子状にまとめ、額から頭頂部にかけて厚めの布を巻いている。兜の代わりだ。革鎧に身を包み、背嚢には小振りの盾がくくりつけられている。腰には短剣と、足下まで届くかという長剣。そのどれもがよく手入れされ、使い込まれているのが見てとれた。

そのそばには鎧を着込んだヒビワレツメが立っている。着込んでいるといっても、守っているのは胸と腰、それから手足の関節の部分だけで、腹などはがら空きだ。背骨が見えている。頭には左右に広がった角を備えた兜。手には重く分厚い剣と大きな円盾だ。盾には兜と同じように角のある動物が描かれている。背中には弓矢と、カナエの持つものよりもはるかに大きな背嚢があった。ほとんどの荷物はこのゴーレムが背負っている。

セキはいつもの背負い袋に小剣をくくりつけた格好だ。身につける鎧が手に入らなかったので、そのぶん、動きが阻害されない程度に重ね着をしている。腰のベルトにはいくつもの小袋がぶら下がっている。魔術に用いる触媒である。中身は乾燥させた薬草や鉱物などの粉末だ。

立派な冒険者たちの姿であった。

「さ、行こうか。ゴブリンが朝から襲ってくるとは思わないけど、念のためヒビワレツメが先頭でわたしが後ろ。セキ君は真ん中よ」

「へぇへぇ」

「わかった」

いささか緊張した面もちでセキは頷く。これから踏み入る森を見ると、少し身震いがした。「大丈夫よ。ヒビワレツメが先導する限り滅多なことはないわ」

安心させるようにカナエが言った。

「さて、と。目撃ではこのあたりからゴブリンが出てきたらしいから、ここから森へ入っていけばゴブリンの跡を見つけられると思う。それまでは気を楽に、でも油断しないでね」

森へと進む三つの人影。その頭上では、ざわざわと木々が揺れていた。

まるで森が揺れているようだった。




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